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2021/03/25
クラフトマンシップ
「クラフトマンシップ」
日本語だと「職人の技能」、「職人芸」、「技巧」などと訳されます。
言葉では一言で終わってしまいますが職人の技術は一朝一夕にはできません。
人類の歴史の中で代々、受け継がれてきた木工技術。
それを受け継いだ職人は数え切れないほどの失敗を繰り返し、悔しい思いをし、試行錯誤をしながらようやく形にする事ができます。
そして「もっと良いものを」という思いを持ち続け、さらに高みを目指しています。
色々な職種の職人の方がいますが、おそらく「完璧なものを作った」と思う人はほとんどいないのではないでしょうか?
何かしらの改善点が毎回あります。
自分自身もこれまでに完璧な修理はした事はありません。
「あの時こうすれば良かった」、「もっと上手くなりたい」、「もっと綺麗に仕上げたい」と日々思っています。
Yチェアを作っている会社で有名なデンマークの老舗家具メーカー、カールハンセン&サン(以下カールハンセン)。
社名のロゴの下には「PASSIONATE CRAFTMANSHIP」と書かれており、「クラフトマンシップ」をとても大事にしています。
※Passionate・・・情熱的な
家具職人だった創業者•カール・ハンセンの「家具」、そして「ものづくり」への熱い思い。
ウェグナーや様々なデザイナーと共に作り上げてきた最高品質の家具。
その自信と誇りが今の家具職人の方に脈々と受け継がれていると感じます。
ご来店されるお客様からよく「素敵な家具ですね」と言われることがあります。
北欧家具ということは知らず「作っているのですか?」と仰る方もいます。
その度にデンマークで作られている事、今から約70年前にデザイン、製作された家具でずっと受け継がれている事をご説明します。
北欧家具やブランドを知らなくても国を超えて「素敵な家具」と思ってもらえるという事は作り手としてはとても嬉しい事だと思います。
自分がカールハンセンの家具でクラフトマンシップを特に感じたのはダイニングテーブル「CH006」を見た時でした。
ウェグナーがデザインし、そのデザイン性、機能性、メンテナンスのしやすさ等、本当におすすめできる一生モノの家具です。
そのテーブルの天板の裏がとても綺麗に仕上げてあります。
前職で国産家具や輸入家具など色々なテーブルの修理をしてきましたが、テーブルの裏を綺麗に仕上げているのをほぼ見たことがありません。
実際に見えない所であり、そこまで綺麗に仕上げなくても機能的には問題ありません。
裏を綺麗に仕上げるということは、表と同じ面積なので単純に手間が2倍かかります。
このテーブルはその手間をかけて表と同じように綺麗に研磨し仕上げてあります。
そこに自分はウェグナーやカールハンセンの「どこを見ても美しいように」というプライドと美学、そして大切な資源である「木」に対しての敬意を感じました。
自分がいつも心掛けているある職人の方の言葉があります。
「心を込めて仕事をする」
当たり前のことですが、ついつい忙しさや効率を優先しすぎて忘れてしまいがちです。
クラフトマンシップとは単に高い技術だけのことを言うのではなく、使う人や運ぶ人など様々な関わる人達、しいては材料である「資源」のことまで考えて「心を込めて」ものづくりをする。
カールハンセンの家具を見てそう感じました。
2020/12/31
改めて自己紹介⑩「感謝」
2019年8月、三津でお店としてオープンして早1年と5ヶ月。
もうすぐ2020年が終わろうとしています。
コロナ禍で本当に大変な1年でした。
自分達は始めたばかりの小さなお店。
しんどい事ばかりでした。
常に不安、プレッシャーとの戦いで、よく妻と励まし合いながら何とかこの1年を乗り切りました。
と同時にお客様をはじめ、本当にたくさんの方の支えでここまで来れたと心から思います。
自分の実力を試すために独立をしましたが、結局は色々な方の応援、サポートが無ければ何もできませんでした。
この場をお借りしてお礼を申し上げます。
本当に有難うございました。
まだまだ未熟者ではありますが、来年も日々、謙虚に学ぶ事を忘れずに「北欧家具」そして「家具修理」という仕事に向き合って参りたいと思います。
明年もどうぞ宜しくお願い致します。
2020/12/31
改めて自己紹介⑨「独立」
2018年3月27日、4月に出産を控えた妻と長女が先に松山へ出発しました。
遅れること8月に自分も松山へ移住しました。
8月、9月は大塚家具の有給が残っていたので、それを消化しつつ、役所に行って移住の手続きや独立に向けての準備をしていました。
そしてついに10月1日、税務署へ行き開業届を出しました。
自分の長年の夢であり、目標だった独立は書類を提出するだけであっという間に終わりました。
しかし、心の中ではようやくスタートラインに立てた喜びでいっぱいでした。
家具修理業で届け出をし、屋号は「Tukuroi」。
家具を修理するということをより暮らしの身近に感じて欲しいという思いで「繕う(つくろう)」という言葉を少し変えて屋号にしました。
作業場は今も住んでいる妻の実家の一部屋です。
しかし、いざ独立はしても松山に知り合いもいなければ、友達もおらず仕事は全くありません。
唯一、妻の妹が以前働いていたカフェの方を妻も知っていたので、その方に初めての営業をしました。
カフェのオーナーの方はとても良い方で、会ったばかりなのに初めての修理のお客様になっていただきました。
また、松山の色々なお店や会社をされている方も紹介してくださいました。
それでも実際に生活するためにはお金が足りず、妻のお父さんの仕事を手伝ったり、単発のアルバイトをしたり、郵便局のアルバイトをして食い繋ぎました。
よく独立に関する本に始めるのは簡単だが軌道に乗るまで、そして続けることが大変と書いていますが、まさにその通りです。
何とか食い繋ぎ、ちょっとづつですが修理の依頼が入り始めた2019年の2月、自宅での作業は音や粉塵、臭い、そして広さ的にも限界がきていたので倉庫を借りようと決心をし、物件を探し始めました。
色々と物件を探す中、縁あって愛媛県松山市の港町、三津にある今の倉庫をお借りすることができ、移転することになりました。
2020/12/31
改めて自己紹介⑧「移住」
大塚家具で5年程働いて迎えた2018年の1月。
その年の4月に次女が生まれることもあり、夫婦で今後どう暮らしていくかを話し合いました。
子育てをもっと自然豊かな所でしたい。
職人を志した時から持っている独立という夢を叶えたい。
ただ、独立するとしても貯金はそこまでない。
やっていけるのか?
このまま大塚家具にいた方が安定しているのではないか?
色々な葛藤がありました。
1番の問題は収入面でした。
そこでまず夫婦で出した結論は、自然が豊かな所で子育てはしたいという思いは変わらないので「移住するけどまずは就職しよう」ということでした。
移住先は妻の地元である愛媛県松山市を第一候補にし、家具修理の仕事を探しました。
しかし、愛媛で家具修理の求人は全くありません。
ずっとやってきた家具修理の仕事。
生涯の仕事と決めた家具修理の仕事は最低条件だったので、全く違う業種に転職することは考えていませんでした。
色々と検索している中で、たまたま見つけたのが香川県丸亀市にある北欧インテリアショップ「CONNECT」でした。
大好きな北欧家具を取り扱い、しかもちょうどヴィンテージ家具のリペアスタッフを募集している。
松山からはちょっと離れるけど、四国で家具修理の仕事、しかも北欧家具も取り扱っている所で働けるチャンスはなかなか無いと思い、応募して面接を受けることにしました。
面接の前日、仕事終わりに横浜駅から夜行バスに乗って高松へ向かいました。
約12時間のバスでの移動。
道中、色々なことを考えました。
35年間、生まれ育った東京を離れること。
病気もした両親のこと。
友達も知り合いもいない所でやっていけるのか。
そんなことを考えながら眠りにつきました。
翌朝、高松に到着し、そこから車を借りて丸亀にあるお店に向かいました。
今では大変お世話になっている社長さん、マネージャーさんと面接をし、北欧家具のことやインテリア業界のことなど色々なお話をさせていただきました。
とても素敵なお店でここで働いてみたい、と素直に思いました。
東京に戻った数日後、有難くも採用していただけるという連絡がありました。
妻も喜び、とても嬉しかったと同時にまた新たな葛藤が生まれました。
やっぱり独立したい、と。
年齢的な事、長女の小学校の問題、次女の出産。
色々なことを考えてタイミングは今なのではないか?
このタイミングを逃すとまた遅くなってしまうのではないか?
ただ、せっかく面接もして、採用してくださると仰ってるCONNECTさんに申し訳ない、という気持ち。
自分のエゴを通すのか、恩に応えるのか。
人生で1番と言っていいほどの大きな選択。
とても悩みました。
夜、長女が寝た後に妻とずっと話し合いました。
1週間ほどお時間をいただきCONNECTさんに出した答えは「独立」でした。
怒られても、けなされても、夢だった「独立」に挑戦したい、と思いました。
CONNECTの社長さんは、そんなわがままな自分を温かく応援してくださいました。
感謝してもしきれません。
こうして2018年1月から約1ヶ月、悩み、葛藤の日々でしたが、愛媛県松山市で独立する、と腹を決め、「夢」に挑戦することになりました。
そして2018年3月、出産を控えた妻と長女が先に松山へ移住し、遅れること8月に生まれ育った東京を離れ、自分も移住をしました。
2020/12/31
改めて自己紹介⑦「家具リペア職人として目指していること」
大塚家具は新品の家具を販売する会社なので、古い家具は引き取って処分をします。
引き取ってきた家具はまだ使えそうなものばかり。
それが大量に処分されているのを毎日のように目にしていました。
その量はゴミ収集車、約4台分位はあったと思います。
初めてこの光景を見た時はショックを受けました。
実際に自分も粗大ゴミで家具を捨てた事はあります。
その時はシール1枚貼って、家の前に出すだけなのであまり心は痛みませんでした。
ただ、これが色々な家庭から集まるとそれなりの量になりインパクトがあります。
大塚家具の倉庫だけでも毎日ゴミ収集車4台分。
これが東京、日本、全世界で見たら家具だけで1日にどれだけの量が捨てられているのでしょうか?
「家具を直しながら永く使う文化を広めたい」
大塚家具で見た光景が、自分が家具リペア職人として目指すところを考えるきっかけになりました。
単純に家具を捨てなければ、燃やしたり、埋立地に埋める必要はありません。
家具を直しながら使えば、無駄に新しい家具を作る必要はなく、木も伐採しなくて済みます。
何より家具が親から子供、そして孫へと受け継がれていくという文化が広まれば、とても素敵なことだと思います。
ただ、「文化を広める」のはそう簡単ではありません。
自分の一生をかけた仕事です。
まだまだやる事、学ぶ事はたくさんありますが「家具が好き」で「家具リペア職人」の仕事に誇りを持っています。
そのような社会を目指し、日々精進していきたいと思います。