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2025/06/11
こだわり
こんにちは。
Tukuroiの高橋です。
昨日、スタッフの方と「仕事でこだわっていること」について話をしました。
スタッフの方のこだわりは「ディテール(細部)」。
ミースファンデルローエの「神は細部に宿る」の言葉で話が盛り上がりました。
自分が「仕事」でこだわっていること。
今までこだわってきたこと。
改めて振り返ってみると、「美しさ」がキーワードのような気がします。
「美しさ」の定義は人によって違いますが、言葉ではうまく表せない自分が目指す「美しさ」は確実に存在します。
決められた位置に収まっている道具。
ラベルの向きが揃っている缶スプレー。
角が揃っている作業用布団。
並べられた在庫家具の縦と横のライン。
掃き掃除。
トイレ掃除。
磨かれた蛇口。
修理が終わった家具の最後の水拭き。
塗装後の艶の均一さ、触り心地。
できていないことや、まだ技術的にできないことも沢山ありますが、自分が求める「美しさ」。
それを求めて、もがいている毎日です。
そう考えると子供の頃から「美」について意識していたかもしれません。
覚えているのは平日の夕方にやっていた「ルパン3世」の再放送。
その中で流れる歌の歌詞で、
『男には 自分の世界がある
たとえるなら 空をかける ひとすじの流れ星
孤独な笑みを 夕日にさらして
背中で泣いてる 男の美学』
この「美学」という言葉に強く惹かれた記憶が残っています。
「美しさ」や「美学」。
これを貫くには手間や時間がかかることの方が多い印象があります。
今の時代とは逆行する考えかもしれません。
ただ、花が咲くのに時間がかかるように、
神秘的な大木が育つのに何十年、何百年とかかるように、
たとえ時間がかかっても、自分が納得する「美しさ」を追い求め、
理想とする「美学」を貫く。
そんな生き方をしたいと思っています。
高橋
2025/06/06
椅子の張替え お勧めの生地紹介
こんにちは。
スタッフ上田です。
今回はTukuroiで椅子の張替えの際の生地選びについてと、当店で取り扱わせていただいている「OLTAS(オルタス)」の生地についてご紹介させていただきます。
Tukuroiでは椅子の張替えの生地を選んでいただく際に、お客様に生地サンプルを見ながら選んでいただきます。
【椅子の張替え 生地選び】
~お客様と一緒に選ぶ理由~
椅子の張り替えをご依頼いただく際、私たちがとても大切にしているのが、座面の生地をお客様ご自身に選んでいただくということ。
「そんなのよくわからない…」と戸惑われる方もいらっしゃいますが、実はこれ、とても大事なプロセスなのです。
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◎なぜ生地選びをお任せするの?
それは単純に、「椅子の印象を決めるのは座面の生地だから」です。
たとえば同じ形の椅子でも、選ぶ生地によって雰囲気がガラッと変わります。
• ナチュラルで柔らかい雰囲気にしたいならリネンやコットン
• クラシックで重厚感を出したいなら合皮やベルベット
• お子様のいるご家庭には、耐久性・防汚性のある素材
などなど、ライフスタイルやインテリアに合わせて選ぶことで、もっと長く、もっと好きでいられる椅子になります。
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◎生地見本を見ながらじっくり選べます
Tukuroiでは、張り替えのご相談時に生地サンプル帳をお持ちします。質感や色合い、実際の肌ざわりなどを確認しながら、「どんな椅子にしたいか」を一緒にイメージしていきます。
用途やお好みに応じて、おすすめの生地をご提案しますので、ご安心ください。
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◎張り替え後の満足度がグッと上がります
実際に張り替えたあと、お客様からよくいただくのが、
「自分で選んだ生地だから愛着がわく!」
「部屋の雰囲気にぴったりで嬉しい」
というお声。
せっかく張り替えるのであれば、「自分だけの特別な椅子」にしてほしい。
そんな想いから、私たちはお客様と一緒に生地選びをする時間を大切にしています。
椅子の張替えを検討されている方にとって、どんな生地を選ぶかはとても大切なポイントですよね。
見た目の印象はもちろん、肌ざわりや耐久性、毎日の暮らしに馴染むかどうか…迷ってしまう方も多いと思います。
Tukuroiでは、張替えの際に豊富な生地からお選びいただけるよう、さまざまな素材・テイストをご用意していますが、今回はその中でも特におすすめの生地、「OLTAS(オルタス)」をご紹介いたします。
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【OLTASとは?】
「 OLTAS(オルタス)」は、愛知県一宮市を拠点とする日本のテキスタイルメーカーで、アパレルメーカーやセレクトショップ向けに素材を供給しています。
自社で原料手配から生地の製造、縫製まで一貫した企画・モノづくりを行っており、余分な中間コストを排除し、材料にこだわった商品作りを実現しています。
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【 OLTASの生地の特徴】
1. ションヘル織機(Schönherr loom)による伝統的な織り
OLTASでは、ヴィンテージのションヘル織機を使用して生地を織っています。
この織機は、昭和初期から使用されている旧式のシャトル織機で、糸に余計な負荷がかからず、しっかりとしながらもふんわりとしたソフトな生地を生み出します。
また、生地の端(セルビッチ)が美しく仕上がるため、パイピング処理が不要となり、スッキリとした仕上がりになります。
ションヘル織機で織りあげたあと、整理加工(FINISHING)を手間ひまかけて行っています。
木曽川の伏流水を使い、できるだけ環境負荷の少ない自然由来の石鹸を最小限使用して洗っています。
付着した機械油を落とした後、乾燥を経て最後はたっぷりのスチームを上下から当て、生地をリラックス状態にします。
2. 素材へのこだわりと品質
OLTASの製品は、品質にこだわり、長く愛用できる素材作りを目指しています。
例えば、カシミヤやシルクなどの高品質な素材を使用し、吸湿性や保温性に優れたブランケットを製造しています。
これらの素材は、厳寒な環境にも対応できる機能を持ち、使うほどに柔らかくなる特徴があります。
3. 日本国内での生産
すべての製品は、日本国内で生産されており、縫製や仕上げ加工も国内の職人によって行われています。
これにより、品質の管理が徹底され、消費者に高品質な製品を提供しています。
OLTASでは、本物の素材を見極め、原料、機械、仕上げ加工まで全てにこだわりを持ち10年後、20年後まで使い倒されていくまで味わいのある素材を使用しています。
オルタスは、ほどよいハリと柔らかさを兼ね備えた平織りのウールコットン生地で、手作り初心者から上級者まで幅広く愛されています。
その織りの美しさと、洗練されたマットな質感は、ナチュラルテイストな雰囲気にぴったりです。
見た目のナチュラルさだけでなく、実際に座ったときの快適さ、手ざわりの良さにも定評があり、人気の高い素材です。
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【インテリアになじむ色展開】
OLTASのもうひとつの魅力は、落ち着いたカラーラインナップ。
ベージュ、グレー、カーキ、くすみブルーなど、お部屋の雰囲気を壊さず、むしろ引き立ててくれるような色味が揃っています。
派手すぎず、でもしっかり存在感がある。
そんな大人のインテリアにぴったりのトーンで、椅子が空間に自然と溶け込みます。
シンプルながらも洗練された質感をもち、生地の良さが椅子をぐっと引き上げてくれます。
使い勝手の良い布地をお探しなら、OLTASの生地がおすすめです。
Tukuroiでは、OLTAS以外にも他の張地サンプルもご用意いております。
「こんなテイストにしたい」
「部屋の色に合わせたい」
そんなご希望があれば、スタッフがご提案いたします。
お気軽にご相談ください。
「思い出の詰まった椅子を、もう一度」
張替えは、そんな願いを叶えてくれるサービスです。
2025/05/30
グレーな生き方
好きな色
こんにちは。Tukuroiの高橋です。
修理のお問い合わせをを受ける際、座面の生地を張り替えるのにお客様から「おすすめの生地はありますか?」
と、聞かれることがよくあります。
個人的な好みだけでいうと、いつも「グレーの生地」と答えています。
よくよく考えてみると、街中で目を引き、なぜか気になってしまうものは、
「グレー」の色のものが多いような気がします。
白でも黒でもない、その中間の色。
そんなグレーについて、最近、なぜ好きなのかを考えてみました。
自分なりにたどり着いた答えが「生き方」でした。
光と影、冬と春
自然界に光と影、朝と夜があるように、
孤独を感じる冬と、喜びの春があるように、
人生にも光と影、冬の時代、春の時代があると思います。
成功の裏にある、誰にも知られない孤独。
笑顔の裏にある、言葉にならない葛藤。
朝日のように輝く時間もあれば、押しつぶされそうな暗闇の夜の時間もある。
どちらかだけの人生を経験したこともなければ、そう生きている人を見たこともありません。
みんな、人知れぬ苦しみや悲しみを抱えていると思います。
若い頃は、苦労が多かった分、苦労が無い人生を夢見ていました。
ただ、そんな人生は無いと40歳にして気付きました。
春の喜びを味わえるのは、冬の寒さを知っているから。
そして、冬の寒さに耐えられるのは、春の記憶が心を支えてくれるからだと思います。
苦労と幸せ、悲しみと喜び
「苦労の先に幸せがある」なんて、あまり簡単には言いたくはありません。
でも、苦しんだ分だけ、人の優しさが沁みたり、涙を流したからこそ、
星の美しさ、一輪の花の力強さを感じることができると思います。
独立して以来、何度、夜空の星に癒されたことか。
踏まれても、刈られても何度でも立ち上がる雑草に何度、勇気をもらったことか。
悲しみと喜びも、表裏一体。
どちらかだけを選んで生きることはできない。
どちらもあるのが人生。
弦楽器も弦を張りすぎず、緩すぎない具合が1番良い音が出る、というのを聞いたことがあります。
白だけを求めたり、黒だけを怖れたりせず、
どちらも受け入れる。
そんな生き方とグレーという色を重ねているのかもしれません。
白黒をつけないことで見えるもの
世の中には「正解を求める圧力」があり、
自分も気付かないうちに子供や他人に強要していたかもしれません。
「はっきり言いなさい」「どっちなの?」「 良いか悪いか?」
でも、人生の多くはグレーゾーンです。
決められないからこそ、悩み、考え、成長できる。
グレーという色に、そういう余白を感じているのかもしれません。
答えを急がず、判断を急がず、ただ「そこにあること」を許す色。
どちらにも傾きすぎない色。
派手さはない。でも深さがある。
弱さもあるが、強さもある。
光も影も、喜びも悲しみも、全てを受け入れる。
そんなグレーのような「生き方」をしたい。
だから、自分はグレーが好きなのかもしれません。
高橋
2025/05/23
「好き」と「想い」がつながる場所
はじめまして、こんにちは。
このたび、ブログを初めて書かせていただくことになりました。
木工製作と家具リペアを担当しております、藤野と申します。
今回は自己紹介を兼ねて、私がTukuroiと出会うまでのお話をさせていただければと思います。
木工の道を探して
私の略歴については「スタッフ紹介」ページにも掲載しておりますが、ここでは少し違った角度からお話しします。
ご縁あって、ここ愛媛に移り住んできた当初。
仕事を探していた私は、ある“想定外”に直面していました。
それは――
「思っていたより、木工の仕事が見つからない…」という現実でした。
やむを得ず、前職である木工への想いを心の奥にしまい込み、松山市内の会社でグラフィックデザイナーとして働くことに。
デザインの仕事も好きでしたし、それなりのやりがいや楽しさも感じていました。
でも、頭の片隅には諦めきれない、“職人”“ものづくり”“木の仕事”…。
「やっぱり、木に触れて仕事がしたいなぁ…」
出会いは、10ページのブログ
「もう一度、木工の仕事がしたい」
「職人として積み重ねてきた経験を活かしたい」
そんな思いを抱えながら、日々情報を集めていたある日、Tukuroiのブログに出会いました。
それは全10ページにもわたるもので、職人としての歩みや想いがまっすぐに綴られていました。
読み始めると止まらず、夢中で一気に最後まで読み切ってしまいました。
高橋代表が抱えてきた葛藤や選んできた道、それに込めた想いに深く共感し、どの言葉も胸に強く響いたのを覚えています。
(↓高橋代表の当時のブログはこちら)
https://tukuroi.info/info/2020-12/page/2
そして興奮冷めやらぬまま、思い切って「何かお手伝いできることはありませんか?」とメールを送りました。
Tukuroiという静かな共鳴
後日、高橋代表とお会いしてたくさんお話をさせていただきました。物腰はとても柔らかく、ブログを読んで感じたままの、その実直なお人柄に惹かれました。
この「人のあたたかさ」は、Tukuroiという北欧を基調としたお店全体の柔らかな雰囲気にも、そのまま表れているように感じます。
もともと私は、北欧のシンプルで誠実な、美しいデザインが好きでした。
「ハンス・J・ウェグナー」に代表される家具デザイン、「マリメッコ」の色鮮やかなテキスタイル、「イッタラ」や「アラビア」のテーブルウェア、「ムーミン」といった誰もが一度は触れたことのあるような作品など…挙げればきりがないほど、北欧デザインの魅力に惹かれてきました。
そして、ものづくりに携わってきた私にとって、「リペア(修理)」という考え方は、新しい価値観との出会いでもありました。
「壊れたものも捨てずに直し、大切に永く使い続ける」という理念は、「これだけものが溢れる時代に、さらに新しいものを作ることへの迷いや、ゴミをできるだけ増やしたくない」という私の思いとも重なりました。
Tukuroiには、そんな私の「いいなと思うこと」「好きなこと」「やってきたこと」「できること」「やりたいこと」などが、まるで奇跡のようにつながっていました。
これからも、ものづくりの現場から
こうしてTukuroiの一員としてあたたかく迎えていただき、今、ここで働けることを心から嬉しく思っています。
これまでの経験を活かす以上に、日々新たな発見や学びの連続。
職人として、ひとつひとつ丁寧に、心を込めて家具と向き合う毎日です。
貴重なご縁に感謝しながら、これからもTukuroiの一員として、自分にできることをひとつずつ積み重ねていきたいと思っています。
どうぞ、よろしくお願いいたします。
2025/05/14
使い続けたくなる理由
こんにちは。
主に北欧ヴィンテージ家具のリペアや塗装を担当している森です。
わたしたちの仕事は、ただ壊れたところを直すだけではありません。
これからも長く使っていただくために、どんな修理がふさわしいのか。
そんなことを考えながら、日々家具と向き合っています。
そうしていると、ふだんの暮らしの中でも「丁寧につくれたもの」に自然と目がいくようになります。
たとえば、わたしが乗っているスポーツクーペ。
設計もデザインも10年ほど前のものですが、今もその「つくり」の良さや素材の上質さに、心動かされます。
イルミネーションの光の演出、木目と金属のコントラスト、日本の伝統色を取り入れた内装など、見ているだけで癒されるようなデザインです。
さらに、本革シートやステアリング、センターコンソールなど、触れる全ての部分に職人のこだわりが感じられます。
本革の柔らかさや、スイッチ類のカチッとした確かな操作感に至るまで、「ああ、ちゃんとしてるな」と思わずニヤけてしまう瞬間があります。
クルマに限らず、こういう感覚に共感してくださる方も多いのではないでしょうか。
いまは効率やコストを優先するものづくりが主流ですが、わたしのクルマには、見えないところにまで手がかけられた“真面目なつくり"が感じられます。
この考えはわたしたちの家具修理にも通じています。
長く愛されるように、ひとつひとつ丁寧に手をかけていく。
少し楽しく、仕事と向き合っていきたいと思います。
